SEM-EBSDで得られる結晶方位とSEM像方位の不一致とその対応策

近年、走査型電子顕微鏡(scanning electron microscope: SEM)に電子線後方散乱回折(electron backscatteringdiffraction: EBSD)検出器を取り付け、SEM中で特定の微小領域の相の同定や結晶方位などの結晶学的な情報を得、さらには岩石を構成する鉱物の結晶方位の配向性を取得することが盛んに行われている。

EBSP (electron back-scattering diffraction pattern) の取得に関しては購入メーカーが提供するソフトを使うことが多く、解析に関してはメーカー提供のソフトだけではなく国内外の研究室が提供している解析ソフトを使用することがある。ここで、メーカー提供のソフトについては、El-Dasher et al. (2009, Analysis of EBSD Data (L17) 27-750, Fall 2009, Texture, Microstructure & Anisotropy)によって、得られるSEM像とEBSPから得られた結晶方位との関係が正しくないという、問題が指摘されている。最近では、ヨーロッパの構造地質のメーリングリストでこの問題が取り上げられ、2016年のEGUにてKilian et al. (2016, EGU2016-8221)による発表があった。しかし、こうした指摘について、森田&Goulden (2016, JpGU, NIS12-03)による日本地球惑星科学連合2016年大会よる発表はあったものの、特に国内では必ずしも周知されているとはいえない。調べてみると、国内でも、鈴木(2013)が、すでにこの問題点を報告していました。 我々の研究室でも、2015年9月頃からこの問題を確認した。そこで、あらかじめc軸の向きがわかっている試料を用意し、SEM像とEBSPから得られた結晶方位との関係について検証実験を行い、その結果について日本地球惑星科学連合2016年大会において報告をおこなった。発表した内容は、次のファイルをご覧頂きたい(一部加筆・修正・補足説明してある。)。また、確認方法についても書いているので、気になる方は、参考にしていただきたい。

「三宅 亮・瀧川 晶・伊神 洋平・大井 修吾・中村 隆太・土`山 明:SEM-EBSDで得られる結晶方位とSEM像方位の不一致について、日本地球惑星科学連合2016年大会、SMP43-P05」

我々の研究室では、この件についてさらに検討を重ねた結果、この問題に対する対応策として、SEM像とEBSDで得られる方位を一致させるSample tilt, Detector orientation の各パラメーターを見出した。これにより、普通の反射法によるEBSD(standard-EBSD/s-EBSD)に加え、透過EBSD(Transmission Kikuchi Diffraction, t-EBSD/TKD)も、問題ないことを確認した。この対応策については、日本鉱物科学会2016年年会にて発表をする予定である。発表前ではあるが、この内容は少しでも早く皆さんに広く知って貰う必要があるとの考えから、ホームページに掲載することとした。

「三宅 亮・伊神 洋平・瀧川 晶:SEM-EBSDで得られる結晶方位とSEM像方位の不一致とその対応策について(仮題)、日本鉱物科学会2016年年会にて発表予定」

この内容は、Oxford instruments社の公式見解ではないことを申し添える。我々の提案するパラメーターを使用する場合は、今後の参考としたいので連絡(三宅:miya-_at_-kueps.kyoto-u.ac.jp, "-_at_-"を@に変換してください)を頂きたい。また、この件についての質問や相談も、メールにてお受けしますので連絡いただきたい。また、特に鉱物科学会の内容については、今後よりわかりやすく修正していく予定であるので、その都度確認していただきたい。

我々のところで使用した、コランダム試料については、貸し出すことが可能です。必要でしたら連絡ください。

文責:三宅 2016/5/25 (2016/8/3修正)